税務

第3章:VAT 0%税率と還付の新条件(2025年法改正)

2025年改正のポイントを押さえ、VAT還付で失敗しないための完全ガイド

このガイドは、駐在1年目の方や法令初心者の方でも理解できるよう、易しく分かりやすい表現をめざしています。本章では、付加価値税法第9条第1項a(90/2025/QH15)、181/2025/ND-CP(2025年7月1日施行)の第17条を中心に、VAT 0%税率の適用条件と還付手続のポイントを分かりやすく解説します。


🔹 改正前後の法令の位置づけと背景

🌟 改正前(48/2024/QH15 の状況)
付加価値税法第9条第1項aでは、VAT 0%税率の対象となる輸出貨物は以下に限定され、みなし輸出貨物(オンザスポット輸出)は法律上明記されていませんでした:

  • ベトナムから外国の組織・個人に販売され、国外で消費される貨物
  • ベトナム国内から保税区域内の組織に販売され、保税区域内で輸出生産活動に直接使われる貨物
  • 出国手続きを終えた個人に隔離区域で販売された貨物
  • 免税店で販売された貨物

👉 みなし輸出貨物(オンザスポット輸出)は通達・政令レベルでのみ根拠があり、解釈の揺れがありました。

🌟 改正後(90/2025/QH15 の状況)
付加価値税法第9条第1項aに「みなし輸出貨物(オンザスポット輸出)」が新たに明記され、法律レベルで正式にVAT 0%税率対象となりました。これは税務調査や還付申請の根拠を強化する大きな進展です。

🌟 下位法令と今後の課題
従来の通達219/2013/TT-BTCや政令209/2013/NĐ-CPに基づいていた規定は、90/2025/QH15の改正により法律レベルに格上げされました。一方、下記の181/2025/ND-CPの現時点の規定には詳細が十分に反映されておらず、今後の通達や補足政令のフォローが必要です。

📌 付加価値税法第9条第1項a 改正前後の位置づけ・背景比較表

項目改正前(48/2024/QH15 の状況)改正後(90/2025/QH15 の状況)
法律での位置づけVAT 0%税率の対象は、国外消費・保税区向け・免税店販売等のみ法律で明記。
みなし輸出(on the spot輸出)は法律上根拠なし(政令・通達レベルの規定のみ)。
付加価値税法第9条第1項a に「みなし輸出貨物(on the spot輸出)」が新たに明記され、法律で正式な対象となる。
実務上の課題・みなし輸出は通達・政令根拠のみで、解釈や適用にばらつき。
・税務調査や還付審査で法的根拠の弱さが課題。
・法律レベルの根拠ができ、税務調査・還付審査での主張が強化。
・証憑・手続要件の厳格運用が求められる。
下位法令の状況通達219/2013/TT-BTC、政令209/2013/NĐ-CP に規定あり。181/2025/ND-CPに一部反映済。ただし詳細運用は今後の通達・補足政令でフォロー必要。

🔹 VAT 0%税率の適用条件(181/2025/ND-CP 第17条)

VAT 0%が適用される輸出貨物は以下の通りです:

  • a) ベトナムから外国の組織・個人へ販売され、ベトナム国外で消費される貨物。
  • b) ベトナム国内から保税区内の組織に販売され、保税区内で輸出生産活動に直接使用される貨物。
  • c) 出国手続きを終えた個人(外国人またはベトナム人)に隔離エリアで販売された貨物、および免税店で販売された貨物。

2025年7月5日現在、オンザスポット輸出に関する記載がまだありません。

  • 法律90/2025/QH15でオンザスポット輸出(みなし輸出貨物)はVAT 0%対象と明記されましたが、181/2025/ND-CPにはこの表現が現時点で盛り込まれていない状況です。
  • ベトナムの法体系では法律が最優先であり、法律と政令に矛盾があれば法律が優先されます。政令は法律を具体化するものです。
  • ただし実務の現場(税務調査、役所窓口など)では、政令や通達の詳細条件に従った運用が重視され、政令・通達の解釈が実質的に優先される場面もあります。
  • よって、オンザスポット輸出は今なお注意が必要な状況といえます。

🔹 還付申請時に必要な書類

VAT 0%税率の適用および還付申請には、以下の書類が必要です:

  • 契約書(販売・加工・委託契約など)
  • 非現金決済を証明する書類
  • 輸出通関書類(輸出申告書、輸入申告書)
  • 外国事業者の指示書(on the spot取引の場合)

🔹 日本企業がミスしやすいケース例

  • 保税区向け販売で必要書類に不備があり輸出扱いを否認される
  • 外国事業者の指示書の形式や内容が不十分で還付が遅延する
  • 契約書と実際の取引内容の不一致で税務署から追及を受ける

👉 実務では、インボイス発行・税関手続・VAT申告にこの改正内容を確実に反映させることが重要です。次章では、よくあるトラブルと当局指導事例を詳しく解説します。